これまで、シリアスなミステリを書く作家だと思っていたところに「幽霊」で、しかも「救助隊」って何だよ、と。
タイトルだけで、路線変更を狙ったものの、外れてしまった作品、と勝手な想像を働かせていたのだ。
読みたい、と思うようなタイトルではなかったわけだが、読む本もなかったので、知っている作家の文庫だという理由だけで手に取った。
内容(「BOOK」データベースより)
浪人生の高岡裕一は、奇妙な断崖の上で3人の男女に出会った。老ヤクザ、気弱な中年男、アンニュイな若い女。そこへ神が現れ、天国行きの条件に、自殺志願者100人の命を救えと命令する。裕一たちは自殺した幽霊だったのだ。地上に戻った彼らが繰り広げる怒涛の救助作戦。傑作エンタテインメント、遂に文庫化。
自殺した幽霊たちが自殺志願者100人の命の救うというミッションを課せられる、というコミカルな展開。
これまで、高野氏の「13階段」「グレイヴディッガー」「K・Nの悲劇」を読んできた身としては、この変わりようには驚きを通り越して、唖然とした気持ちになった。
しかし、読んでみるとこれは、あきらかに当たり作品だった。
高野氏の経歴を知らなかったのだが、元々は映画監督をめざし、実際に映画業界で脚本、演出などをされていたことを初めて知った。
なるほど、そういった経験から幽霊人命救助隊が生まれたのだと思うと妙に説得力がある。
100名の自殺志願者を救うというミッションも、これ一冊に収まるのかという懸念を感じずにはいられなかったが、大幅に端折る事無く、主人公らが救助を通じて、自らの身に起こった事に気付いていく展開は見事としか言いようがない。
それぞれの自殺志願者の事情や背景を丁寧に、それでいて簡潔に描かれており、中だるみしない作品だった。
単なるエンタテインメント作品としてだけでなく、自殺が抱える様々な状況や事例が詰め込まれている点も興味深く読ませてもらった。
単にニュースでみる自殺報道や、自殺者の統計では感じられないような、個々の状況が丁寧に表現されていて、ただの娯楽作品という目で見るのは非常にもったいない作品である。
タイトルがふざけた感じなので、敬遠していたのだが、これは当たり作品。
是非、多くの人に手に取ってもらいたい作品だと思う。
幽霊人命救助隊の岩司評価
評価:★★★★☆
一言:100人救助の過程もラストも素晴らしい
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